決算分析

株式会社SUBARU
2026-03期 有報5年推移分析

公開日: 2026/09/25

売上は5期で最高、営業利益は9割減 | 有価証券報告書 2026年3月期

参考株価と時価総額

項目値
前提2026-09-24 時点の参考株価。提出日現在の発行済株式総数で算出
株価2,628円
発行済株式総数717,335,273株
時価総額18,851.6億円

売上は最高、利益は1割 ―― SUBARU2026年3月期を読む

提出日:2026-06-22 / 会計期:2026年3月期

項目前期当期前期比
売上収益46,858億円47,850億円+2.1%
営業利益4,053億円401億円-90.1%
1株当たり配当115.0円115.5円+0.4%

ようか | 驚き

えっ、営業利益 -90.1% !?

売上はちゃんと増えてるのに!?


やよい | あきれ顔

いちばん下の行も見てみるのじゃ。


ようか | キョトン

配当は……ちょっと増えてる?

利益が9割も消えたのに?


やよい | 自信あり

うむ。

しかも、減った理由はひとつではない。


ようか | 泣きつく

もう何が何だかわからん!


やよい | 微笑み

順番にほどいていくぞ。


目次

  • 会社概要: 米国で稼ぐクルマの会社
  • 収益構造: 台数を増やしてコストを削る姿勢
  • 前期からの変化: 売上は増えて利益は9割減!?
  • 当期の注目ポイント: 環境規制の損失と関税
  • 5年推移の財務諸表まとめ: 稼ぐ力とキャッシュ
  • 指標まとめ: 利益の戻り方と還元の続き方
  • 補足: データの読み方と注意点

1. 会社概要: 米国で稼ぐクルマの会社

ようか | 笑顔

SUBARUかぁ、車を作ってる会社だっけー?

やよい姉! 解説よろしく!!

やよい | 自信あり

うむ、車を作っておるのは正解じゃ。

ひとことで言えば、SUVを中心とした車を、

主にアメリカで売って稼いでおる会社じゃ。

ゆり | 無表情

まとめたのです。

区分内容
主力商品自動車(SUVが中心)。主な生産拠点は群馬製作所と米国インディアナ州の工場の2か所
その他商品航空宇宙(防衛省向けのヘリコプターや哨戒機、ボーイング向けの中央翼など)、不動産賃貸
収益形態新車の販売が中心。航空宇宙は受注してから作って納める形
開示区分自動車・航空宇宙・その他の3区分。当期の外部売上は自動車46,383億円(構成比96.9%)、航空宇宙1,417億円、その他50億円
販売台数(当期)89.6万台。うち北米が70.8万台で約8割
大株主トヨタ自動車が議決権の21.46%を持つ筆頭株主。スポーツカーや電気自動車を共同開発している

ようか | 驚き

売上のほとんどが車じゃん!

しかも売れてる車の8割がアメリカ!?

ほぼアメリカの会社みたい!

やよい | あきれ顔

アメリカの会社になったわけではないぞ。

本社も主力工場も日本じゃ。

ただ、お客さんの多くがアメリカにおるのはその通りでな。

ようか | キョトン

それって、何か困ることあるの?

やよい | 説明

アメリカの政策が変わると、それがそのまま利益に響くのじゃ。

今期は、まさにそれが起きた年じゃな。

ゆり | 真剣

有報でも、北米の政策や通商の動きの影響を受けやすいと書かれています。

航空宇宙は、受注してまだ納めていない分(受注残高)が 7,075億円 あるのです。

2. 収益構造: 台数を増やしてコストを削る姿勢

ゆり | 無表情

会社はどんな稼ぎ方を目指しているのでしょう?

やよい | 説明

うむ、よい問いじゃ。

車を作るには、工場や新しい車の開発に先にお金がかかる。

だから売る台数を増やして、そのお金を回収していく作りじゃな。

ゆり | 無表情

有報に書かれている方針を並べたのです。

方向中身(有報の記載)
増やす車種を大きく増やし、2030年代前半に世界で120万台の販売を目指す
削る米国の関税の影響を取り返すため、2,000億円規模のコスト削減「原価維新20-30」を始めた
組み替える自社で開発する電気自動車(BEV)の発売を延期し、ハイブリッド車(HEV)やエンジン車へ開発の人手を回す。成長投資の総額1.2兆円は変えない

ようか | 泣きつく

BEV……HEV……全然わからん!

やよい | 説明

BEVは、電池とモーターだけで走る電気自動車じゃ。

HEVは、エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車じゃな。

ようか | キョトン

電気自動車を後回しにしたってこと?

やよい | 自信あり

そうじゃ。

会社は、いまはハイブリッドやエンジン車の人気が高いと見ておる。

それで、電気自動車に本気でお金を入れる時期を遅らせたのじゃ。

ゆり | 微笑み

台数を増やしてコストを削りつつ、投資の中身をハイブリッド寄りに組み替えている、ということですか?

やよい | 自信あり

うむ、そうじゃな。

コスト削減で、関税の負担をどこまで取り返せるか。

車種を増やした分、台数が本当に伸びるか。この二つは見ておきたいのう。

3. 前期からの変化: 売上は増えて利益は9割減!?

売上・利益はどう動いた?

ようか | 笑顔

去年と比べて、売上とか利益はどうだったの?

アメリカでいっぱい売れて、ウハウハ!?

やよい | あきれ顔

冒頭で見たとおり、そう簡単な話ではないのじゃ。

表を見るのじゃ。

項目前期比較前期当期
売上収益↑46,858億円47,850億円
売上総利益↓9,803億円7,195億円
営業利益↓4,053億円401億円
営業利益率↓8.65%0.84%
親会社の所有者に帰属する当期利益↓3,381億円908億円

ようか | 驚き

売上は増えてるのに、営業利益が10分の1になってる!?

なにがあったの!?

やよい | 説明

まず言葉をそろえておくぞ。

売上収益は、この会社の売上のことじゃ。

売上総利益は、売上から車を作るのにかかった費用(売上原価)を引いた残りじゃ。

ようか | キョトン

営業利益は?

やよい | 説明

売上総利益から、販管費を引いたものじゃ。

販管費は、販売や本社の運営にかかる費用などのことじゃな。

ゆり | 無表情

営業利益が減った 3,652億円 を、項目ごとに分けたのです。

区分前期当期前年差営業利益への影響
売上総利益の減少9,803億円7,195億円△2,608億円△2,608億円
その他の費用の増加164億円1,423億円+1,259億円△1,259億円
研究開発費の増加1,424億円1,694億円+270億円△270億円
販管費の減少4,207億円3,736億円△471億円+471億円
その他の収益などの増加45億円60億円+15億円+15億円
営業利益の減少4,053億円401億円△3,652億円-

ようか | 驚き

「その他の費用」が8倍くらいになってる!

その他って、なんかざっくりしすぎじゃない!?

やよい | 説明

この会社の会計ルール(IFRS)では、特別な損も営業利益の中で引くのじゃ。

中身の大半は、会社が「米国環境規制に関する損失」と呼んでおる 1,206億円 じゃ。

ゆり | 無表情

有報に書かれている内訳なのです。

内訳金額中身
環境クレジットの減損320億円米国の環境規制に対応するために持っていた権利のような資産。将来役に立つ見込みがなくなった
電動車の開発資産の減損143億円電動車の開発にかけて資産として計上していた分
不利な契約に対する引当金743億円環境規制対応や電動化のために結んだ契約のうち、払うお金が得られる効果を上回る分。支払いは1年以内の見込み
合計1,206億円米国の環境規制がゆるんだことを受けて、資産と今後の対応を見直した結果

ようか | 泣きつく

減損……引当金……全然わからん!

やよい | 説明

減損は、持っている資産が思ったほど役に立たなくなって、

帳簿の値段を下げて損にすることじゃ。

ようか | キョトン

引当金は?

やよい | 説明

将来払うことがほぼ決まっている費用を、先に今期の費用として積んでおくものじゃ。

どちらも、今期に現金がその分出ていったわけではないぞ。

ようか | キョトン

じゃあ、ルールがゆるくなったのに損しちゃったってこと?

やよい | 自信あり

そうじゃ。

厳しいルールに備えて用意しておったものが、ルールがゆるんで要らなくなったのじゃ。

わらわの見立てじゃが、今期だけの特別な損とみてよさそうじゃ。

ようか | 笑顔

じゃあ、それを除けば元どおり?

やよい | あきれ顔

そうはいかぬ。

足し戻しても営業利益は約 1,607億円 で、前期より 2,446億円 ほど少ないのじゃ。

ゆり | 真剣

残りの減少の多くは、売上総利益の減少なのです。

売上総利益率は 20.9% → 15.0% に下がりました。

会社は減益の理由に、米国の追加関税を挙げています。

ただ、関税でいくら減ったかの金額は、有報には書かれていないのです。

ようか | キョトン

関税って、外国のものを買うときにかかる税金だっけ?

やよい | 説明

そうじゃ。

日本からアメリカへ運ぶ完成車と、アメリカの工場で使う一部の輸入部品に、

追加の関税がかかったと有報に書いてある。

ようか | キョトン

それだけ?

やよい | 説明

会社は、販売台数の減少と、ドルに対する円高もあったと説明しておる。

売上総利益が減った分の多くは、関税とこの台数減・円高によるものじゃろう。

関税の金額が開示されておらんから、あくまでわらわの推定じゃがな。

ゆり | 無表情

関税の負担を軽くする米国の制度から受けた補助金 338.5億円 は、売上原価から差し引かれているのです。

研究開発費は 270億円 増え、会社は電気自動車関連の費用も挙げています。

販管費は 471億円 減りましたが、理由の内訳は開示されていないのです。

手元資金とネットキャッシュは?

ようか | 笑顔

利益はガクッと減ったけど、現金は?

さすがに減っちゃった!?

やよい | 微笑み

まずは表で確認するのじゃ。

項目前期比較前期当期
現金及び現金同等物↑9,415億円10,053億円
現金及び現金同等物の対資産率↓18.5%18.3%
有利子負債(借入金・社債+リース負債)↑5,303億円5,505億円
ネットキャッシュ↑4,111億円4,549億円
ネットキャッシュ比率(提出日終値ベース)↑22.6%26.1%
自己資本比率↓53.3%50.6%

ようか | 自信あり

現金もネットキャッシュも増えてる!

利益が減っても現金は増えたってことだ!

やよい | あきれ顔

残念ながら、ここには落とし穴があるのじゃ。

その前に、言葉を確認しておくぞ。

ようか | 驚き

落とし穴!?

やよい | 説明

ネットキャッシュは、現金から利息のつく借金(有利子負債)を引いた残りじゃ。

ネットキャッシュ比率は、それが時価総額の何%に当たるかじゃな。

自己資本比率は、総資産のうち返さなくてよい株主のお金でまかなっておる割合じゃ。

ようか | キョトン

うん、で、落とし穴って?

やよい | 説明

「現金同等物」には、預けてから3か月を超える定期預金が入らぬのじゃ。

この会社は、定期預金に大きなお金を出し入れしておる。

当期は定期預金を 2,143億円 取り崩して、現金同等物のほうへ移したのじゃ。

ゆり | 無表情

定期預金も含めた数字を並べたのです。

項目前期比較前期当期
手元資金(3か月超の定期預金を含む、会社開示)↓15,897億円14,534億円
定期預金などを含むネットキャッシュ(参考)↓11,134億円9,817億円

ようか | 驚き

こっちだと減ってる!

定期預金から現金のほうへ移しただけ!?

やよい | 自信あり

言い方はともかく、そういうことじゃ。

定期預金も含めた手元資金は 1,363億円 減っておる。

それでも借金よりずっと多く、借金の多い会社というわけではないのじゃ。

ゆり | 真剣

総資産は 4,041億円 増えましたが、自己資本の増加は 659億円 なのです。

1年以内に払う負債(流動負債)は 2,666億円 増えました。

主な中身は、仕入先への支払いなどの営業債務 +1,159億円 と、

環境規制関連を中心とした引当金 +957億円 です。

フリーCFはどうなった?

ようか | キョトン

つぎはフリーCFでしょ?

…えーっと、自由に使えるお金、だっけ?

やよい | 微笑み

おお、覚えておったか。

本業の現金の出入り(営業CF)と、投資の出入り(投資CF)を足した残りじゃ。

まずは表じゃな。

項目前期比較前期当期
営業CF↓4,921億円3,582億円
投資CF↑△4,041億円△1,147億円
フリーCF↑881億円2,436億円
定期預金の出入りを除くフリーCF(参考)↓2,124億円293億円

ようか | 驚き

フリーCFは3倍近くに増えてる!

なのに下の行はガクッと減ってる!?

やよい | 説明

さっきの定期預金じゃ。

定期預金を取り崩すと、投資CFにプラスとして入る。

その分を除くと、フリーCFは大きく減っておるのじゃ。

ゆり | 無表情

要因をまとめてみたのです。

区分前期当期前年差中身
投資CFの増加要因(主因)△1,243億円2,143億円+3,386億円定期預金の純増減。前期は預け入れ、当期は払い戻し
投資CFの減少要因△1,709億円△2,344億円△635億円有形固定資産の取得。工場などへの設備投資が増えた
営業CFの減少要因(主因)4,485億円1,075億円△3,410億円税引前利益の減少
営業CFの増加要因459億円985億円+526億円引当金などの増加。費用にはなったが現金はまだ出ていない
営業CFの増加要因-463億円+463億円減損損失。現金の出ていかない損
営業CFの増加要因△1,732億円△1,215億円+517億円法人税の支払額の減少
営業CFの増加要因198億円991億円+793億円営業債務の増加。仕入先への支払いが後ろにずれた分
営業CFの減少要因△310億円△612億円△301億円営業債権の増加
営業CFの減少要因△925億円△1,036億円△111億円棚卸資産の増加。会社は新車在庫の増加や為替の影響と説明

ようか | キョトン

利益は3,000億円以上減ったのに、

営業CFは1,300億円くらいしか減ってないのはなんで?

やよい | 説明

さっきの減損と引当金は、現金が出ていかない損じゃからな。

その分と、支払いが後ろにずれた分などで、減り方が利益より小さくなったのじゃ。

ようか | 笑顔

じゃあ、ちょっと安心?

やよい | 説明

そうとも限らぬ。

引当金 743億円 は、1年以内に払う見込みと会社は説明しておる。

来期はその支払いで、営業CFが押し下げられるかもしれぬのう。

ゆり | 真剣

表の有形固定資産の取得 2,344億円 は、キャッシュ・フロー計算書の支出額なのです。

有報で説明されている設備投資の総額は 2,102億円 で、集計の範囲が違います。

うち当社が 1,216億円、米国の工場が 636億円 です。

これとは別に、リース用の車両などに 495億円 を投じているのです。

やよい | 説明

車を多く売るには、工場への投資が欠かせぬ。

設備の購入費を使う年数に分けて費用にしたものを、減価償却費という。

この会社は、それと近い規模の投資を毎年続けておるのじゃ。

ようか | キョトン

台数を増やしたいなら、投資もずっと続くってこと?

やよい | 自信あり

うむ、投資も一緒に増える形じゃな。

配当と自己株式の取得は?

ようか | 笑顔

利益が減ったってことは、配当も減っちゃった?

ゆり | 無表情

株主へのお金の戻し方を並べたのです。

項目前期比較前期当期
1株当たり配当↑115.0円115.5円
配当総額(基準日ベース)↓841.2億円832.6億円
自己株式の取得額↓600.0億円500.1億円
配当性向(連結、計算値)↑24.9%91.7%
総還元性向(連結、計算値)↑42.6%146.7%

ようか | 驚き

利益が減ったのに、配当がちょっと増えてる!

146.7%って、もうけ以上に配ってない!?

やよい | 説明

配当性向は、利益のうち何%を配当に回したかじゃ。

総還元性向は、配当に自己株式の取得も足した割合じゃな。

ようか | キョトン

自己株式の取得って?

やよい | 説明

会社が市場から自分の株を引き取ることじゃ。

この会社は、買った分をすべて消却、つまり消しておる。

当期は、還元の額が利益を上回ったのじゃ。

ゆり | 無表情

配当の方針は「DOE3.5%」で、累進的な配当を目指すと有報に書かれているのです。

ようか | 泣きつく

DOE……累進……もう無理!

やよい | 微笑み

DOEは、株主のお金(自己資本)に対して何%を配当するかの目安じゃ。

累進配当は、配当を減らさずに維持するか、増やしていく考え方じゃな。

ようか | キョトン

利益じゃなくて、自己資本が基準なの?

やよい | 自信あり

そうじゃ。

だから利益が落ちた年でも、配当が減りにくいのじゃ。

さらに2026年5月には、上限 1,500億円 の自己株式の取得も決めておる。

ゆり | 微笑み

利益は特別な損と関税で大きく減ったけれど、配当と自己株式の取得は続けている、ということですね。

4. 当期の注目ポイント: 環境規制の損失と関税

ようか | 泣きつく

ゆり姉ぇ~わたしにも分かるようにポイントまとめて~😢

ゆり | 微笑み

まとめてみました


▶ 売上収益は前期比 +2.1% の増収なのです。一方で営業利益は △90.1%、営業利益率は 8.65% → 0.84% に下がったのです。

▶ 減益の主因のひとつは、米国の環境規制がゆるんだことによる損失 1,206億円 なのです。これを除いても、営業利益は約 2,446億円 減っているのです。

▶ もうひとつは米国の追加関税なのです。影響額は開示されていないので、売上総利益の減少 2,608億円 の多くを関税などが占めるというのは推定なのです。

▶ 現金及び現金同等物は +6.8% ですが、定期預金を含む手元資金は △8.6% と減っているのです。

▶ フリーCFは 881億円 → 2,436億円 に増えましたが、定期預金の払い戻し 2,143億円 を除くと 2,124億円 → 293億円 に減ったのです。

▶ 配当性向は 91.7%、総還元性向は 146.7% なのです。配当の方針はDOE3.5%で、累進的な配当を目指しているのです。


5. 5年推移の財務諸表まとめ: 稼ぐ力とキャッシュ

ようか | 笑顔

前期との違いは分かった!

じゃあ、もっと長いスパンで見るとどうなんだ!?

やよい | 自信あり

うむ、まずは稼ぐ力から見ていこう。


項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
売上高27,44537,74547,02946,85847,850
当期純利益7002,0043,8513,381908
営業利益9052,6754,6824,053401
営業利益率3.3%7.1%10.0%8.6%0.8%

やよい | 説明

ようか、ここから何を見る?

ようか | 自信あり

売上は2024/3期まですごい勢いで増えて、そのあとはだいたい同じ!

利益は2024/3期が一番で、そこから2年続けて減ってる!

やよい | 説明

よう見ておる。

2022/3期は、半導体が足りなくて車を作れなかった年じゃ。

そこから販売台数が 73.4万台 → 97.6万台 まで戻り、ドルも 112円 → 144円 の円安になった。

ようか | 驚き

台数も戻って、円安も来たんだ!

やよい | 自信あり

うむ。

この2つで、2024/3期に営業利益 4,682億円 まで増えたのじゃ。

ゆり | 無表情

減益になった2期の理由を、有報の説明から並べたのです。

年度営業利益の前年差主な理由(有報の説明)
2025/3期△629億円販売奨励金(販売店への値引き支援)の増加と台数減(97.6万台 → 93.6万台)。研究開発費も+289億円。航空宇宙も工事損失引当金などで△223億円(27億円 → △196億円)
2026/3期△3,652億円米国の追加関税と、米国の環境規制に関する損失1,206億円

ようか | キョトン

売上はそんなに変わってないのに、利益だけ減っていったんだ。

やよい | 自信あり

そうじゃ。

売上の規模は、それほど落ちておらん。

落ちたのは、売上に対してどれだけ利益が残るかという採算のほうじゃな。

次は、キャッシュの流れを追っていくぞ。


項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
現金及び現金同等物8,8319,79510,4809,41510,053
現金及び現金同等物の対資産率24.9%24.8%21.8%18.5%18.3%
ネットキャッシュ4,4195,5245,2474,1114,549
ネットキャッシュ比率22.8%26.8%20.6%22.6%26.1%
フリーCF1591,6706408812,436

ようか | 驚き

フリーCF、当期が5年で一番多い!

2024/3期は利益が一番なのに、フリーCFは少なめ!?

ゆり | 無表情

定期預金の出入りを除いた数字も並べたのです。

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
営業CF1,9575,0387,6774,9213,582
定期預金の純増減(△は預け入れ)△54△1,103△3,661△1,2432,143
定期預金の出入りを除くフリーCF2142,7734,3012,124293
定期預金などを含むネットキャッシュ4,9577,34211,22211,1349,817
同 ネットキャッシュ比率25.5%35.7%44.2%61.1%56.4%

ようか | 驚き

順番が逆になった!

こっちだと2024/3期が一番で、当期が一番少ない!

やよい | 説明

2024/3期は、営業CFが 7,677億円 と5年で一番多かった。

そのうち 3,661億円 を定期預金に預けたから、見かけのフリーCFが小さく出たのじゃ。

当期はその逆で、払い戻したから大きく見えておる。

ゆり | 無表情

定期預金の出入りを除くと、稼いだ現金は2024/3期をピークに減っている、ということですか?

やよい | 自信あり

うむ、営業CFが 7,677億円 → 3,582億円 と2期続けて減っておる。

ただ、2期で減った理由は同じではないぞ。

ゆり | 無表情

2025/3期の営業CFの主な前年差を並べたのです。

区分2024/3期2025/3期前年差中身
営業CFの減少要因(主因)518億円△925億円△1,443億円在庫(棚卸資産)の増減。在庫が増えた分、現金が出ていった
営業CFの減少要因5,326億円4,485億円△841億円税引前利益の減少
営業CFの減少要因△1,105億円△1,732億円△627億円法人税の支払額の増加

やよい | 説明

2025/3期は、利益の減少より、在庫(棚卸資産)が増えた影響のほうが大きかったのじゃ。

在庫の中身までは開示されておらぬ。

当期は、先ほど見たとおり利益の減少が一番大きい。

ようか | キョトン

同じ「減った」でも、年によって理由が違うんだ。

やよい | 自信あり

そういうことじゃ。

その一方で、工場などの有形固定資産の取得は、当期が5年で最も多い 2,344億円 じゃ。

ようか | 驚き

えっ、じゃあお金足りなくなっちゃう!?

やよい | 微笑み

慌てるでない。

定期預金も含めたネットキャッシュは、5年前の2倍ほどの水準を保っておるぞ。

ゆり | 微笑み

さらに詳しく知りたい人向けに、財務諸表をまとめたのです。必要な方は下を開いてください。

▼ 財務諸表を見る

ゆり

詳細に知りたい人向けに、財務諸表まとめたのです。

▼ BS(貸借対照表)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
現金及び現金同等物8,8319,79510,4809,41510,053
流動資産20,42224,29830,19231,91233,744
有形固定資産8,4168,6189,69110,61812,218
総資産35,43839,44248,14150,88254,923
流動負債8,52310,13512,30912,62515,291
固定負債7,9058,20710,17811,10111,816
純資産19,01021,09925,65427,15727,817
自己資本比率53.4%53.3%53.2%53.3%50.6%

▼ PL(損益計算書)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
売上高27,44537,74547,02946,85847,850
売上原価22,40630,38037,10537,05440,655
売上総利益5,0397,3659,9249,8037,195
営業利益9052,6754,6824,053401
親会社帰属純利益7002,0043,8513,381908

▼ CF(キャッシュ・フロー計算書)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
営業CF1,9575,0387,6774,9213,582
投資CF△1,797△3,368△7,037△4,041△1,147
財務CF△985△1,223△665△1,873△2,178
フリーCF1591,6706408812,436
現金増減△243965685△1,065639

(連結・IFRS、単位は億円。売上高は売上収益、純資産は資本合計、固定負債は非流動負債、自己資本比率は親会社所有者帰属持分比率の値です。現金増減は現金及び現金同等物の増減額です)

6. 指標まとめ: 利益の戻り方と還元の続き方

やよい | 自信あり

ここまでを大まかにまとめよう。

ようか、最後にまとめるのじゃ。

ようか | 自信あり

任された!

売上は5年前よりずっと増えて、当期は5年で一番!

利益が減った年でも配当は増やして、株主へのお金の戻しも続けてる!

特別な損が今期だけで済むなら、関税の負担をコスト削減でどこまで取り返せるか注目だな!

ゆり | 微笑み

さらなる分析用は下を開いて見るのです。

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指標まとめ(2026年3月期)

やよい: 単純な数値では測れぬが、バリュエーション指標としてはPERやEBITDAやROICあたりを、財務健全性は流動比率やEBITDA/利息あたりを、株主還元余地は現金比率やネットキャッシュ比率を指標として見るとよいぞ。

指標算出値見方
PER20.75倍時価総額 18,851.6億円 ÷ 親会社の所有者に帰属する当期利益 908億円。特別な損失で利益が落ちた年のため高く出る
現金比率18.3%現金及び現金同等物 10,053億円 ÷ 総資産 54,923億円。3か月超の定期預金は含まない
流動比率220.7%流動資産 33,744億円 ÷ 流動負債 15,291億円
ネットキャッシュ4,549億円現金及び現金同等物 − 有利子負債 5,505億円(借入金・社債+リース負債)。定期預金などを含めると 9,817億円
ネットキャッシュ比率24.1%ネットキャッシュ ÷ 時価総額(参考株価ベース)。定期預金などを含めると 52.1%
EBITDA3,112億円営業利益 401億円 + 減価償却費及び償却費 2,711億円。減損 463億円は足し戻していない
EBITDA/自己資本11.2%EBITDA ÷ 親会社の所有者に帰属する持分 27,804億円
EBITDA/利息45.9倍EBITDA ÷ 利息の支払額。前期は 138.7倍
ROIC0.89%営業利益 × 0.7 ÷(自己資本 + 借入金・社債)。前期は 9.11%

リスク

ようか: 有報からの抜粋だぜ!

  • 特定の事業および市場への集中: 売上の9割以上が自動車で、販売は北米が中心。関税政策が変わると、日本から米国へ運ぶ完成車や米国工場で使う輸入部品に追加関税がかかり、コストが上がる。
  • 事業活動に影響を与える各国の政治・規制・法的手続き: 米国の追加関税が当期の収益に一定の影響を与えたと明記。関税の長期化や、それに伴う為替・需要の変動が業績に大きく響く可能性。
  • 原材料価格の変動: 米国工場で使う一部の輸入部品の調達コストが関税で上がる。中東情勢による原油やエネルギー価格の上昇も挙げている。
  • 気候変動: 各国の燃費規制に合わない場合の追加費用や販売機会の損失。電動化の見通しが難しく、市場との食い違いが生じる可能性。
  • 市場における需要・競争環境の変化: 需要の減少や価格競争で販売奨励金が増えると、利益が圧迫される。
  • 地政学・地経学的災害(国際紛争・テロリスク): 当期に独立した項目として記載。中東情勢で海外向けの輸送船が遅れ、販売台数が減った。
  • サイバーセキュリティ: 「情報ネットワークセキュリティ」から名称を変え、対策の重要性が一段と高まったと記載。
  • 為替の変動: 海外売上の比率が高く、円高は利益を押し下げる。

株主還元

ゆり: 株主還元だけを見ての投資はダメですが、長期で買う前提の場合は現在値を知っておきましょう。

項目数値補足
発行済株式総数717,335,273株2023/3期までは769,175,873株。2023年11月、2024年10月、2026年1月の自己株式消却で5年で約6.7%減少
自己株式数1,506,899株自己保有割合 0.21%。取得した自己株式は消却しているため少ない
1株当たり年間配当115.5円中間57円+期末58.5円。期末配当は有報提出時点では2026年6月24日の定時株主総会の決議予定
配当の推移56→76→106→115→115.5円2022/3期から2026/3期。2024/3期の106円は記念配当20円を含む
配当利回り4.39%参考株価 2,628円ベース
連結配当性向(計算値)91.7%配当総額 832.6億円 ÷ 親会社の所有者に帰属する当期利益 908億円
総還元性向(計算値)146.7%配当総額に自己株式の取得額 500.1億円を足して算出
配当方針DOE 3.5%累進的な配当を目指す。DOEの基準の持分からは、為替などで大きく動く「その他の資本の構成要素」を除く
方針の移り変わり—2023/3期 連結配当性向30〜50% → 2024/3期 総還元性向30〜50% → 2025/3期 総還元性向40%以上・DOE3.5% → 2026/3期 DOE3.5%・累進配当
自己株式の取得500.1億円当期の取得額。2024/3期は400.1億円、2025/3期は600.0億円
決議済みの自己株式取得上限1,500億円2026年5月の取締役会で決議。上限8,000万株、取得期間は2027年3月16日まで、全数消却予定
ストック型収益との関係—継続的に入る収益は不動産賃貸(外部売上 50億円)程度で、収益の大半は新車販売。参考として配当総額は自動車と航空宇宙の外部売上の約1.74%
大株主トヨタ自動車 21.46%筆頭株主

7. 補足: データの読み方と注意点

参考株価は本記事を作成した時点の値(2,628円、2026-09-24 終値)を使用しています。時価総額・PER・配当利回り・指標まとめのネットキャッシュ比率は、この株価を前提とした参考値で、自己株式は控除していません。

5年推移表とグラフ、および前期比較の表のネットキャッシュ比率は、各期の有価証券報告書の提出日終値と、当時の提出日現在の発行済株式総数から算出した各期の時価総額に基づく参考値です。

  • 2022/3期: 2,523円 × 769,175,873株 = 19,406.3億円
  • 2023/3期: 2,675.5円 × 769,175,873株 = 20,579.3億円
  • 2024/3期: 3,371円 × 753,901,573株 = 25,414.0億円
  • 2025/3期: 2,485円 × 733,057,473株 = 18,216.5億円
  • 2026/3期: 2,427.5円 × 717,335,273株 = 17,413.3億円

指標まとめのネットキャッシュ比率(24.1%)は記事作成時点の参考株価で算出しており、算出基準が異なるため、5年推移表の当期の値(26.1%)とは一致しません。

財務数値は連結・IFRSです。「現金及び預金」の代わりに「現金及び現金同等物」を、自己資本比率は親会社所有者帰属持分比率を使っています。IFRSの営業利益は、減損などの「その他の収益・費用」を含むため、日本基準の営業利益とは中身が異なります。

有利子負債は、借入金・社債とリース負債の合計です。有価証券は抽出した財務データに該当科目の行が無いため0円として扱っています。現金及び現金同等物には、預け入れから3か月を超える定期預金は含まれません。この会社は定期預金を大きく出し入れしているため、定期預金などを含むネットキャッシュと、定期預金の出入りを除くフリーCFを参考値として併記しています。定期預金などを含むネットキャッシュは、償却原価で測定する負債性金融商品(会社注記で主な内訳は定期預金)を加えた値で、会社が開示する手元資金とは範囲が一致しません。

「米国環境規制に関する損失」1,206億円とその内訳は、有価証券報告書の連結財務諸表注記による会社開示の値です。米国の追加関税の影響額は有価証券報告書に開示が無く、売上総利益の減少の多くを関税などが占めるという整理は推定です。

次の整理は、財務諸表の明細や有価証券報告書の記述から推し量った推定を含みます。

  • 売上総利益の減少の多くを、関税と販売台数の減少、円高によるものとみる整理
  • 環境規制関連の引当金の支払いが、来期の営業CFを押し下げる可能性があるとみる整理
  • 環境規制関連の損失を今期限りの特別な損とみる整理(期末時点で自動車環境規制関連引当金が1,083億円残っている点に留意)
  • 収益の大半を新車販売によるものとし、継続的に入る収益を不動産賃貸程度とみる整理

配当性向・総還元性向は計算値です。配当総額は基準日ベース、自己株式の取得額はキャッシュ・フロー計算書の支出額を使っています。提出会社単体では当期純損失のため、単体の配当性向とは異なります。表示している金額は端数処理後の値のため、表の数値同士の足し引きと1億円程度ずれることがあります。

財務諸表は EDINET のデータから自動取得しているため、正確性に欠ける可能性があります。

本記事は EDINET 提出の有価証券報告書(第95期、2026年6月22日提出)をもとに作成した情報整理記事です。 特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。 投資判断はご自身の責任でお願いします。